皆さん、こんにちは、トモノブ・アイナです。
 綾香と智子は、ついに藤田家に戻ってきました。彼、彼女らは家族の絆を取り戻すことができるでしょうか?

 みんなの未来は光に満ちているか

 第五章
『OKAERINASAI』

 藤田家の、夕食の時間。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 誰も口をきこうとしない。重苦しい食卓が続いていた。
 その時だ。

 ピンポーン!

 玄関のベルが鳴った。
「わたし・・・出ます」
 マルチが言った。
「あ、頼むわ」
 浩之が言う。マルチは小走りで玄関に向かった。
「どちら様ですかー?」
「・・・・・・」
 返事がない。
「あのー、どちら様ですかー?」
「・・・・・・」
 やはり返事がない。マルチはドアスコープをのぞいてみた。
「・・・・・・!!」
 レンズの向こうに、見慣れた顔が二つ見える。マルチは慌ててドアを開けた。

 ガチャッ!
 
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あ、あ、あ、あ・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あ、ああ、あや・・・か、か、さん・・・とと、とも、と・・・と、もこ、さん・・・」
 マルチは驚きのあまり、うまく言葉にならない。そこへ、浩之が出てきた。
「どうしたどうした?」
「あや、あやああ、あや・・・さん、ともも、とも、と・・・」
「・・・・・・!!おーい!!みんな出てこーい!!」
 浩之が、大声で居間の方向に呼び掛けた。
「どうしたの、浩之ちゃん?」
「何かあったノ?」
「・・・・・・」
 みんながぞろぞろと、玄関に出てきた。
「「「「「「「「あ、あ、あ、ああーっ!!」」」」」」」」
 玄関先に立っている、綾香と智子の姿に、みんな驚いた。だが、次の瞬間・・・。
「「ごめんなさい!!」」
 二人がしたのは、なんと土下座だった。
「勝手なことして、迷惑かけて・・・」
「みんなに辛い思いさせて・・・わたしって最低や・・・」
「ちょ、ちょっとそんな、立ってください!」
「そんなことしなくたっていいヨ、立って立って」
 葵とレミィが、あわてて二人を立たせた。
「雛山さん、ごめんなさい。言い過ぎた」
「ごめんなさい、葵・・・うっ・・・う・・・」
 立ち上がった二人は、泣きながら理緒と葵に謝った。
「あたしのこと、殴っていい、嫌いになっていい。でもお願い、せめて浩之のそばにいさせて」
「雛山さん・・・ええよ、気がすむまでどついて・・・藤田くんのそばにいられるなら安いもんや・・・」
「そんな、もういいよ・・・」
「わたし・・・綾香さんや保科先輩のこと、絶対に嫌いになんかなりませんよ」
 理緒と葵は、微笑で答えた。
「そうだよ。二人とも、怒っちゃいねえよ」
 浩之が、二人の前に出てきた。
「・・・浩之・・・ごめんなさい・・・辛かったよね・・・」
「・・・藤田くん・・・勝手なことしてごめんなさい・・・」
 今度は浩之に、泣いて謝った。
「お二人とも、心から謝罪しています!どうか、許してあげてください」
 セリオが哀願する。浩之はしばらく黙っていたが、
「・・・・・・許さねえぞ!」
 そっぽを向いて言った。
「じゃあ、あたしのこと、殴ってよ!罵ってよ!」
「早うどついて!最低女ってボロカス言ってや!」
「・・・俺に勉強教えてくれなきゃ、許さねえぞ!もっと鍛えてくれなきゃ、許さねえぞ!ずっといてくれなきゃ、許さねえぞ!・・・許さねえぞ・・・」
 浩之の目に光るものが見えた。
「浩之・・・」
「藤田くん・・・」
 次の瞬間、二人は浩之に抱きついていた。
「ごめんなさい!・・・ごめんなさい!・・・うえええ・・・えええん・・・」
「・・・ごめんなさい・・・うわああん・・・」
 浩之の胸の中で、綾香と智子は大声で泣き始めた。周りのみんなも、つられるように泣き出した。

 みんなしばらく泣き続けていたが、浩之が見計らったように言った。
「もうそろそろいいだろ。スッキリしたか?」
「「うん・・・」」
「みんなもいいよな?」
 その言葉に、みんな頷いた。  
「よし!じゃ、帰ったときの挨拶は・・・決まってるよな?」
 浩之が問いかけた。綾香と智子は、少し間をおいて、
「「・・・ただいま・・・」」
「「「「「「「「おかえりなさい!!」」」」」」」」
 声がきれいに重なった。
「おかえり、綾香、智子。・・・さ、家に入ろう」
 浩之に抱えられるようにして、二人は家の中に入った。

○   ○   ○

「・・・ぐすっ・・・もう、泣けるじゃない・・・おっと」
 志保は涙をあわててふいた。
「・・・やれやれ、世話が焼ける二人ね・・・って、言えた義理じゃないわね」
 苦笑いしながら言った。志保は雅史と一緒に、帰ったふりをして電柱の陰から一部始終を見ていたのだ。
「志保、これで終わりじゃないよ」
 雅史が言った。
「え?まだ何かやるの?」
「実は、他の人にも協力してもらおうと思うんだけど・・・」
「なになに?」
「それはね・・・」

○   ○   ○

 三人は一緒に風呂に入り、ベッドに入った。今までの分、激しく求めあい、愛しあった。
 そして、夜も更けたころ・・・。
「あたしね・・・ホントは、肩身が狭かったの・・・」
 浩之の腕にしがみつきながら、綾香が言った。智子はすでに、もう片方の腕にしがみついて、寝息を立てている。
「何でだ?」
「今まではあたしの実家がお金出してくれてたけど、それがなくなっちゃったから、みんなの期待を裏切ったみたいで。それにバイトをクビになって、みんなあたしのこと、ただ飯食らいだって思ってるんじゃないかって」
「バカだな、そんなこと誰も思っちゃいねえよ。みんなお前のこと、頼りにしてるよ」
「・・・・・・」
「お前は一人じゃない。みんなお前のことを嫌いになったりなんかしない。忘れるな」
「・・・・・・浩之・・・・・・ごめんね・・・」
 綾香の頬を涙がつたう。
「いや、俺も悪かった。思いやりが欠けてたのは確かだ。ごめん」
「そんな、謝らないで。浩之は悪くなんかない。あたしが悪いんだから」
「いや、もっと言いようはあったはずだ」
「ううん、叱られて当たり前よ、葵に当たるなんて」
 二人はしばらくそんなやりとりをしていたが、
「・・・またみんなで、練習やろうな!」
「・・・え?」
 浩之の唐突な言葉に、綾香は少し驚いた。
「明日の放課後、神社に集合!いいな?」
「・・・うん!」
 綾香は力強い返事を返した。
「さ、もうお休みだ」
「お休み、浩之」
 二人はそっとキスをした。

○   ○   ○

 今回はここまで。藤田家を襲った大嵐はようやく去り、青い空が戻ってきました。そしてもう間もなく、彼、彼女らに素敵な奇蹟が訪れようとしていたのです。それは次回、終章で。
終章につづく)



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